中国が門戸を開放
中国が門戸を開放
2020年1月
中国でプレゼンスを確立するためには、規制緩和が次の段階に入るなか正しい道筋を探し出し、そして新しい投資機会を切り開くための信頼できる国際的パートナーがカギになります。
中国がグローバル投資の主流へと駆け上がるなか、投資家は、この世界第2位の規模を誇る株式・債券市場を無視するわけにはいきません。中国政府は、外国資本の取り込み拡大を目的に、資本市場規制の枠組みを徐々に緩和してアクセスの向上と資本移動の促進を図っています。近年、中国は市場自由化政策を推し進めるペースを加速させている模様です。
これは興味深い進展ですが、市場改革がどのような展開を見せ、期待される資金の流入を取り込めるかはまだ不透明です。私たちは、向こう5年から10年のあいだに5つのトレンドが浮上するとみています。
間違いなく、中国金融業界の自由化により、外国人投資家にとってより公平な環境が整備されると考えられます。外資保有上限が、資産運用会社については2020年4月から、証券会社については2020年12月から全廃される予定です。中国がグローバルな金融エコシステムに参入するうえで、これらは極めて重要な動きです。
中国の株式・債券のグローバル指数の採用により、向こう5年から10年で最大4,000億米ドルの外資が中国に流入すると試算されています1。資金流入増大の結果、資本市場の流動性が改善し、中国株については外国人保有比率が3% から10%へ2、中国債券については2%から15%に押し上げられる3と予想する試算がいくつかあります。DVP(デリバ リー・バーサス・ペイメント)決済方式の導入や中国A 株の決済サイクルの長期化、中国本土市場とストックコネクト・プログラム間での休日取引協定の連携などといった市場改革が、外国資本参加の増加をもたらすと考えられます。
各種アクセススキームの調和が、規制緩和と並んで引き続き進められ外国人投資家による中国本土の証券への投資を可能にすることが期待されます。
調和に向けたはっきりとした動きが見られます。その最たる例が、適格海外機関投資家(QFII)と人民元適格海外機関 投資家(RQFII)制度の統合案、QFIIとRQFIIの投資限度枠の撤廃、市場への参入規則の緩和、そして為替市場の自由化です。
今後数年間は現行の各アクセススキームの共存が続くと予想しますが、中国本土の証券は各種制度のあいだで交換できるようになる公算が大きいとにらんでいます。既にこれは現実のものになっています。中国債券は現在、QFIIとRQFII、中国銀行間債券市場(CIBM)ダイレクトスキームの間で自由に移転させることができます。
また、国際取引の中で中国債券を担保として使用できるようにする改革を市場参加者が共同で提唱しており、市場参加者からの注目も高まっています。まだ乗り越えなければならないハードルがいくつか残っていますが、顕著な前進が実現されており、2020年もさらなる前進が見られると考えられます。
アジア証券業金融市場協会(ASIFMA)
ヘッド・オブ・アセット・マネジメント・グループ
マネージング ディレクター
ユージェニー・シェン
近年の中国経済の伸びは驚異的というほかありません。しかしながら、世界最大の貿易国たる座を占める4国際舞台における中国の経済的影響力の成長に、中国人民元(RMB)の国際決済通貨としての採用の伸びが追いついていません。
SWIFT取引レポートによると、2017年、金額で見て国際決済に占めるRMBの割合は1.46%と、世界第7位の座にとどまりました。中国規制当局による大幅な政策転換をよそに、この2年間、この位置に劇的な変化は起きていません。2019年10月、RMBのシェアは1.65%となり、順位を一つ上げ6位となりました。5
世界第2位の経済規模を誇る中国の貿易力と国際決済におけるその通貨のシェアとの間にあるギャップを考えると、RMB利用が伸びる余地が大いにあることがうかがえます。中国は通貨の国際化を急速に進めており、オンショア人民元(CNY)の取引が、中国人民銀行(PBOC)から認可を得た外国為替決済銀行を通じて香港で行えるようになりました。
よって外国人投資家は、CNYの取引をするのに、香港に口座を開設して同等額の米ドルを中国へ送金する必要がなくなりました。私たちの見立てでは、国境をまたぐ取引が増大し、RMBの役割は貿易決済通貨から投資通貨、そして場合によっては準備通貨に広がるとみています。
最近のグローバルインデックスによる中国証券の採用を受けて、リスク選好度の異なる多様な投資家が中国への資金配分を増やしています。欧米の年金基金やヘッジファンド、政府系投資ファンド、保険会社も例外ではありません。
市場参加者の多様化がもたらす利点の一つは、価格発見を促進し、かつ群集心理的な投資行動(herding)を減らすことが見込まれ、市場が極端なボラティリティに見舞われることを少なくするという点です。
中国の資本市場の開放は新たな機会を生みますが、既存の市場の課題や新しい政策転換が急速に導入されている点を鑑みると、投資家にとってはいばらの道であり、とりわけ新たに参入する投資家においては困難が待ち構えています。新しく市場へ参入する投資家は、中国が次の段階の規制緩和を進めるなか針路を示してくれる信頼できる国際的パートナーが必要になるでしょう。世界各国・地域の投資家が中国市場にアクセスするなか、アクセス制度の選択、外国為替の選択性、本国へ資金を引き揚げる容易性、そしてカウンターパーティリスクが考慮すべき重要な要素になるでしょう。
中国におけるポートフォリオの規模を拡大させ、より複雑なリスクの管理を模索するなか、世界の投資家から規制当局に対してヘッジ手段を導入するよう求める声が広がっています。中国の規制当局はこうした要求に耳を傾け、中国の資本市場を諸外国と融合させる政府の計画に則って投資対象の拡充を進めています。2020年に浮上すると考えられる新たな資産クラスをいくつか示します:
資産クラスの拡充は歓迎しますが、本国へ資金を引き揚げる容易性と、これら金融商品を効率的に取引できる環境整備に早急に対応する必要があります。例えば、ヘッジ取引の規則や、外国人投資家と外国為替取引のカウンターパーティ間の法的取り決めに関する明確性は、改善の余地があります。これら資産クラスに対する需要が増大するには、さらなる改革が必要になると考えられます。
MSCI
エグゼクティブディレクター兼
ヘッド・オブ・チャイナ・ リサーチ
ゼン・ウェイ
投資家による中国株の組入比率は現在その大半が低くなっているため、中国A株の指数採用は投資家に対して重要な意味を持ちます。
結局のところ、中国の急速な成長ペースにかかわらず、世界の投資家が直面する主な難題はやはり、未知の領域への正しい針路を定めることになるでしょう。世界と中国を結ぶ正しい投資サービスのパートナーを選ぶことが、有効なアプローチを見つけるための答えなのかもしれません。
BNYメロン
アセットサービシング
アジア太平洋 カストディ・プロダクト・マネジャー
マグダレーネ・テイ